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イヤよイヤよも好きのうち
第13章 やさしいひと
西高の入学式当日────
『タカナ、忘れ物はないのー?』
『はーい!お母さん、もう行くねー!』
真新しい制服。玄関の姿見に映る、馴染みのないその姿に苦笑いをして、家を出た。
コン…
鞄に揺れる金色の小さなお守り。
これは…
『レンジくん…今日から見守っててね。』
これはおそらく、
レンジくんの第二ボタン。
卒業式のあの日…
家に帰って着替えると、スカートのポケットから覚えのない男子のボタンが出てきた。
──「もう濡らしちゃったの…?」
考えられる可能性は、それだけだったから。
第二ボタンだと思い込んでいるのは、あたしがそうだったらいいのにと望んでいるだけの…ただの幻想。
『はぁ…しっかりしなきゃ!』
今日は、レンジくんの言った予言の日。
あたしは今日、誰かに恋をするらしい。それがレンジくんの望んだこと。
だけどね…あたしはまだこのお守りを眺めて…レンジくんのことを考えていたいの…
『…すみません、落としましたよ。』
『えっ…?』
振り返った、そこには───