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イヤよイヤよも好きのうち
第13章 やさしいひと
西高の制服に袖を通し、玄関で振り向いた。
『いってらっしゃい。あんたよく似合うね、その制服。』
『……色々と無理言ってゴメン。おれ、高校では勉強もバイトも頑張るからさ…』
『勉強だけでいいって!むしろ母さん嬉しいよ…もともとあんたには、高校に行って欲しかったんだから。考え直してくれて良かったよ、レンジ。』
『……うん、じゃあそろそろ行ってくる。』
就職するはずだった未来を変えたのは…自分の本当の気持ちを見つけたからだ。くだらないかもしれない。金にもならない。だけどどうしても、今、この手に包みたい人を見つけてしまったから。
『…すみません、落としましたよ。』
行き先は…西高とは反対方向。小森の表札がかかった家を目指して歩いてきた。
『えっ…レンジくん?!』
だって今日は、待ちに待った予言の日。
タカナが優しい男に恋をする…大切な日だから。
『おはよう、タカナ。ハンカチ落ちたよ。』
セックスから始まる関係なんか、もういらない。そんなガキみたいな繋がりは、もう過去だ。
『家を出て早々に落し物なんて、危なっかしいなぁ。このまま一緒に行こうか…ほら。』
『えっ…え、え?レンジくん、何で西高の制服着てるのぉ…?!就職…お仕事はぁ??』
疑問符いっぱいの顔したタカナは、それでも小さな手のひらを差し出した。この繋いだ手に…おれの気持ちを全部込めるよ。
『制服似合うね、タカナ。このまま一人で高校行ったら…わんさか男が寄ってくるに違いないな。だからおれが守ってあげなきゃ、な?』
『え、守るって…?』
『変な虫が付かないように、いつもタカナの隣にいる。これからは毎朝、おれが迎えに来るからな。』
『ふえ…ふえぇ?なんでぇ?レンジくんいいのぉ…?』
『いいんだよ。
……ところでおれさぁ、今どんな男に見える?』
そこは当然『優しい男』のフリだったんだけど…
『え?レンジくんはカッコイイよぉ〜…』
もじもじしてるタカナを見てたら、予言とか、もうどーでもよくなっちゃった。
『あは…タカナ、好きだよ!』
どうか受け取って。
この手に込めたおれの…
めいいっぱいの優しさを。
END
(第13章やさしいひと)