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その、透明な鎖を
第6章 違和感
悠斗は凛の家の呼び鈴を押す。
少し待っても、返事がなかった。
「あれ?」
もう一度、押す。
微かに聞こえる中に響くその音。
呼び鈴が壊れているわけではなさそうだ。
――8月頭の火曜日。
最近は、真っ直ぐに彼女の家に行く。
強い日差しの中、彼女をいつもの場所で待たせておくのは気が進まなくて。
直接行くから家で待ってて、と彼はお願いしていた。
「凛……いないのかな」
そう思った瞬間、カチャ……と鍵が開く音がした。
静かに開かれたドアの向こうに、ワンピースタイプの部屋着を着た彼女が現れる。
「凛」
よかった、と。
ほっとして彼は彼女を見る。
「悠斗」
いつもの笑顔で彼女は迎えてくれた。
……けど。
「どうしたの?」
少し顔色が悪い。
「あ、うん」
それでも中へと促された彼は、彼女に導かれるように部屋へと向かう。