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その、透明な鎖を
第7章 空白の意味
「お母さん、さくらさんって名前なの?」
……あのとき、彼が耳にした名前。
低く響く声が発した『さくら』というその名。
「うん。漢字は桜の花の『桜』だよ」
――ほら。
やっぱり、そうだったじゃん。
あれは凛の両親だった――そう確信した悠斗は、そっと息を吐いた。
「パパは、難しい方の『龍』」
「りゅう、さん」
呟きながら、次のページを悠斗はめくろうとして。
「……あれ?」
その手が止まった。
「写真、もうないの?」
まだ貼るスペースは残っているのに。
そこから数ページ、白紙のままだった。