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その、透明な鎖を
第1章 そこにいたのは
――これからも、凛と。こうやって。
「……いいよ、別に」
本当は、自分も彼女と会いたいと思っているのに。
彼の口から出たのは、そんな素っ気ない言葉で。
それなのに彼女は。
「ほんと? うれしい!」
そう言って、素直に喜んで。
「悠斗の話もたくさん聞かせてね?」
彼の左手を両手でとって。
……手を、とって。
触れた指先に、どくん……と。
悠斗の胸がまた、高鳴る。
でも、振り払うなんてとてもできなくて。
そのままその手はしばらくとられて。
このまま自分からもその柔らかな手を握ってしまいたいという衝動に彼は駆られたけれど。
「……凛」
「ん?」
「今、何時?」
そう。これから、バイトがある。
彼はそろそろ時間が気になって。
でも、右手には鞄。
左手には凛の手。
確認しようにもできなくて、つい彼女にそう頼んだ。