この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
その、透明な鎖を
第9章 だったらどうして
「……悠斗は」
彼女が小さく呟く。
「いつ、から」
そっと、彼を見て。
「ふたりを疑ってたのかって?」
その言葉に、彼女は小さく頷いて。
「……この前、凛の父親と会ったとき。
なんか、違和感っていうか。すげー仲いいな、って」
『お父さん』から『父親』と、その言い方が変わっていたのは、彼の無意識か。
「凛、『龍』って。父親のこと名前で呼んでたし」
「え?」
「……起こされた直後、そう呼んでたの覚えてないんだ?」
また、黙り込む彼女。
「土日は家にいないと、って凛は言ってたけど。
ふたりがやってたあの日……凛の部屋は真っ暗だった」
すらすらと。
彼の口からそれらは発せられていく。
「そういうことのひとつひとつが何か引っかかってて。そしたら、凛のお母さん亡くなってるって聞いたから、ああそうなのかな、って」
彼女を追いつめていくような、そんな言葉が。