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その、透明な鎖を
第9章  だったらどうして


「……悠斗は」


彼女が小さく呟く。


「いつ、から」


そっと、彼を見て。


「ふたりを疑ってたのかって?」


その言葉に、彼女は小さく頷いて。


「……この前、凛の父親と会ったとき。
なんか、違和感っていうか。すげー仲いいな、って」


『お父さん』から『父親』と、その言い方が変わっていたのは、彼の無意識か。


「凛、『龍』って。父親のこと名前で呼んでたし」

「え?」

「……起こされた直後、そう呼んでたの覚えてないんだ?」


また、黙り込む彼女。


「土日は家にいないと、って凛は言ってたけど。
ふたりがやってたあの日……凛の部屋は真っ暗だった」


すらすらと。
彼の口からそれらは発せられていく。


「そういうことのひとつひとつが何か引っかかってて。そしたら、凛のお母さん亡くなってるって聞いたから、ああそうなのかな、って」


彼女を追いつめていくような、そんな言葉が。


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