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その、透明な鎖を
第10章 私が失ったもの
パパと、ママ。
ふたりは本当に……本当に、仲がよかった。
小さいときからずっと一緒の幼なじみ。
当然のようにお互い好きになって。
当然のように結婚したのだと、よく聞かされていた。
私ももちろん、ふたりが大好きで。
自慢の両親で。
そんな両親に愛されながら、毎日毎日、幸せに暮らしていた。
――それなのに。
……ずっと、パパは呟いていた。
虚ろなその目には、何が映っていたのか。
『なんで、桜が』
私がパパの隣に寄り添っても。
私の存在に気づいていないかのように。
『どうして』
『どうして……』
ただ、それだけを。