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その、透明な鎖を
第10章 私が失ったもの
『……パパ』
そして私は、いつも静かにパパを呼ぶ。
そうでもしないと、そうやって呼び止めでもしないと、このまま消えてしまうんじゃないかとそう思わせるほどに、パパのその姿は――……。
『……凛』
私に気づくと、いつもそう私の名前を呼んで。
それで、私はやっとほっとする。
そのまま、私の元へと近づいて。
ゆっくりと頭を撫でながら。
『凛は、桜が遺してくれた大事な娘』
『今のオレには、凛だけがすべて』
『凛がいるからこうやってオレは生きていける』
そんな言葉を何度聞いただろう。
――私は、パパをこの世界に繋ぎ止めている唯一のものなのだ。
『凛は桜にどんどん似てくるね』
『中学生の頃の桜を思い出すよ』
ママを愛し続けるパパにとっては、ママにそっくりな、娘の私という存在が。