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その、透明な鎖を
第10章 私が失ったもの
「桜……」
繰り返すパパの呟きと。
私の身体を這う指と唇。
そのどこまでも優しい愛撫が、パパのママへの深い想いをあらわしていて。
声を漏らすまいと頑なに結んだ唇が少し震えるほどに、なんだか無性に感情が高ぶってきてしまって。
まるで、さっきの……お酒のにおいの強かった口づけが、私の中を、時間をかけてゆっくりと酔わせていくかのようだった。
セックスなんて、話に聞くだけで。
経験なんてあるわけない。
どんなことをするのかぐらいは知っているけど。
どんな気分になるのかなんて想像もできなかった。
それなのに。