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その、透明な鎖を
第11章 私と、そのひと
「体調、もしかして」
突然呟いたパパ。
え? と聞き返すと、言いづらそうにしながら、それでも再び口を開く。
「……凛。生理、きてる?」
「え?」
驚いた私は、思わずパパを見た。
「いや――その、あのとき、出してはいないけど。つけてなかったし、可能性はゼロじゃない、から」
私から目を逸らし、そう続ける。
「……あ」
直接的な言葉を避けているその言葉は、最初意味がわからなかったけれど。
「それは、大丈夫……先週、きたから」
妊娠の心配をしているのだとわかって、私は答えた。
「ごめんなさい、言わなくて」
すぐ言うべきだったのだろう。
でも、私はそこまで頭が回らなくて。
つけてるとか、つけてないとか。
出してないとか、そういうの考えてる余裕なんて、全然なかったから。
妊娠なんて心配もまったく頭になかった。父親としてしまったというその事実でただ頭がいっぱいで――――。