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その、透明な鎖を
第2章 雨の匂いが
――ぽつり、と。
「え?」
顔に、当たる雫。
「雨?」
気づけば、空がさっきより暗くて。
凛のことで頭がいっぱいだった悠斗はそれに気づくのが遅れた。
「ほんとだ」
凛が答える。
ぽつぽつと落ちてきたそれは、あっという間に強まって。
「え? 本降り?」
傘を持っていなかった彼らは、慌てて雨を凌げそうな場所を探す。
「悠斗、あそこ!」
凛が指さした先には、少し離れていたけど橋があって。
ふたりでそこに向かって走った。
――さあさあと降り続く雨。
彼らの身体をしっとりと濡らしていく。
自分の後ろを追いかけてくる彼女に、彼は手を伸ばした。
その手がとられ。
彼はそれをぎゅっと握って橋の下へとひたすら走る――――。