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その、透明な鎖を
第12章 私の存在理由
私は思わず、こくりと喉を鳴らす。
そして、小さく頷いた。
パパは、目を閉じて、息を吐いて。
それから、目を開けて。
そのまま私に顔を近づけてくる。
……静かに目を閉じた。
やがて、そっと唇に感じたその感触。
すぐに離されて。
目を少し開けた私の視界に入ってきた、パパの顔。
その両手が、私の頬を包み込む。
目を細めて、見つめられて。
濡れている私の目元を拭うように、指先が少し動かされ。
そして。
覚悟を本当に決めたかのように、再び私に口づけを。
……ああ。
パパが、私をとうとう受け入れてくれた――――。
その唇を確かに感じながら、安堵感にまた少し涙がこみ上げる。
どうしても、パパに私を受け入れてもらいたかった。
だってそれだけがもう、私の存在理由なのだ。
ママを失って、心も、身体も、何もかもが哀しみの底にあるであろうパパの救いに少しでもなりたい。
パパにとって、もうママの娘である私の存在だけが生きるすべてというのなら。
私にとっても、この自分のすべてをパパに必要とされること。
それだけで、ここにこうして私がいる理由になると。
……そう思いたかった。