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その、透明な鎖を
第2章 雨の匂いが
「わっ」
彼は背中を、軽く押されて。
「え?」
思わず振り向くと、すぐ後ろに凛がいた。
押されたと思ったのは、彼女が身体を寄せてきたからだとそこで彼は気づいて。
「凛……?」
口をついて出たのは、そんな戸惑いの言葉。
「凛ってば」
彼の再度の言葉に、彼女はさらに身体を押し付けてきた。
……漂う雨の匂い。
それと、彼女の甘いそれが合わさって。
彼女の濡れた髪が、自分の首筋に絡み付いてくるような、そんな気配も。
背中に押し当てられた柔らかいその微かな感触も。
「ねえ、凛。ちょっと……頼むから」
すべてが、彼の身体を高めてしまう。
「凛、っ……」
――今すぐ離れて。
でないと、もう――――。
「悠斗」
彼の身体の前に、そっと回される彼女の両腕。
彼をきつく抱き締めてくる、その腕。
さっきよりもより強く背中に押し当てられているその柔らかな感触。
悠斗は大きく息を吐く。
――凛。
……っ、凛――――……。