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その、透明な鎖を
第13章 私が出逢った、彼
龍は結局その後仕事を辞めていた。
とても忙しい仕事だったから、復帰しても前のように働けるかわからない精神状態では続けるのは厳しかった。
ママの保険がおりていたから、慌てて仕事を探さなくても余裕がある程度はあったし、何より私は、龍が家にいてくれることが正直とても嬉しかった。
帰ると、私たちはたくさん話をする。
話をしながら一緒に夕食を作る。
時折、身体が触れる。
でも、その関係を受け入れた私たちは、もう何も気まずく感じることはなくて。
龍がつらそうなとき以外でも。
……そう。私の頭の中が、暗い思いに囚われてしまいそうなとき。
お願いすると、龍はいつもそこから救ってくれる。
何も考えられないぐらい、その行為に没頭させてくれて、私の存在の必要性を何度も。まるで呪文のように囁いてくれる。
それはもう、私たちにとっては普通のことで。
時間と共に、日常の一部のようになっていた。
龍と私は、そうやってふたりきりの日々を暮らしていたのだ。
互いの傷が開くたび、互いでそれを埋め合うようにして。