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その、透明な鎖を
第13章 私が出逢った、彼
龍が働き始めてから、平日の朝から夕方まで私はひとりきり、そこで過ごす。
家のことを終わらせても、時間はたくさんあって。
……それは、ひとり考える時間も、たくさんあるということで。
ついこの間までは、龍と私は反対の立場だった。
私が高校で過ごしている間、家でずっと私の帰りを待っていた龍。
何をして、過ごしていたのだろう。
何を想い、過ごしていたのだろう。
私は、その時間にいろいろなことを思った。
龍とふたりのこの生活を幸せに思う反面、相変わらず自分という存在に心が揺らぐときも多かった。
それは、微かな自己嫌悪程度にとどまるときもあれば、どろどろの泥の中へと自分が引きずり込まれていくような、そんな感覚に囚われるときもある。
ぐるぐると頭を回るその激しい自己否定は、龍のことを思いながら龍と交わすその行為で、いつも押さえ込んでいた。
『龍には私が必要』
『龍のために私はここにいる』
そんなふうに、思うことで。