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その、透明な鎖を
第13章 私が出逢った、彼
……それなのに。
5月半ばのあの日。
朝からなんだか気持ちが落ち着かなくて。
龍のことを考えても。
『もしかしたら、ただの自己満足なんじゃないか』
『勝手にそう思いこんでるだけなんじゃないか』
『龍を、ただの自分のわがままで、縛り付けているだけなんじゃないか』
『本当は、ただ自分の気持ちが満たされたいだけなんじゃないか』
……いろいろな感情が頭をよぎった。
そして、たぶんこの先もずっとこの思いは消えることはないのだろうという、そんな恐怖にも似た予感。
ずっと、私はそれを抱えてこのままこうやって生きていかなければならないのだという、言うならばある意味諦め。
それらに蝕まれてしまいそうな私の心が、そこから逃れたいとばかりにもがき始めて。
そんな感情の高ぶりが、突然涙をこみあげさせる。