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その、透明な鎖を
第13章 私が出逢った、彼
……龍。
助けて。
私のすべてを知り、受け入れてくれるそのひとの名を心の中で呼ぶ。
お願い、助けて。
けれども、今ここに龍はいない。
すぐにでも縋りたいのに。
それができない。
できない――――。
……どうにもならなくなった私は、とうとう衝動的に家を飛び出した。
当てもなく、ただ辺りを彷徨う。
木々に囲まれた狭いその道。
唇を噛みながら泣きそうになるのを必死で堪えて。
俯きながら歩いていると、その風が、ふっと。
……いつの間にか長く伸びてしまった、ママと同じ、この真っ直ぐな黒髪。
それを、さらっていくように。
視界が邪魔された私は、指先で顔にかかったそれを払いながら歩き続けた。
そのまま少し先まで行くと、急に視界が開けて。