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その、透明な鎖を
第14章  泣きたくなる


その出生で、彼女の見方が変わるとか。
そんな気持ちは悠斗の中には生まれてこなかった。
それは、間違いなく言える。
出生がどうこうで、彼女を嫌いになんてなれない。
彼女がそれをどんなに気に病もうとも、少なくとも自分の気持ちはそうだと。
……そう、彼は、彼女を想う。


なら、何がこんなに自分の心を複雑にさせているのか。
何が、納得できてないのか。

悠斗は、そう、自分自身に問いかけた。


「……俺って、凛にとって」


そうしてわき上がる、その疑問。
結局、そこに行き着いた。

自分は彼女にとってどんな存在なのか。
ずっと恋人同士だと思いこんでいたけれど。
彼女から直接的な意思表示はないけれど、こうやって毎日一緒に過ごして、身体を重ねて。
それは、付き合っているからだとばかり、思っていたけれど。


『私のすべては龍に捧げている』


彼女は、そう口にしてはいなかったか?


「じゃあ俺は」


……自分は、いったい。
悠斗は、右腕で目元を隠すようにして、溜め息をつく。


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