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その、透明な鎖を
第1章 そこにいたのは
――不意に、彼女がこちらを見た。
確かに彼は、彼女の視界に入ったはずだった。なのに。
なのに、何でもなかったかのように。
彼の存在なんか、どうでもいいかのように、またそこで遊び始めて。
彼は目を離せないでいたのに。
簡単に向こうは逸らして。
なんだか、おもしろくなくて。
「――ねえ」
彼女に近付きながら、届くだろうと思われたその場所から、彼はそう声を掛けていた。
……すっ、と。
彼女が再度、彼を見る。
「――――っ」
彼は思わず息を飲んだ。
制服姿の彼女は、とても綺麗な子だったから。
濡れたような紅い唇。
ぱっちりとした大きな瞳。
その瞳が、彼を見て。
「……誰?」
その唇が、そう言葉を紡いだ。