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その、透明な鎖を
第14章 泣きたくなる
「そして、あの……雨の日。
橋の下に向かって走るとき、悠斗に手を繋がれて……どきどき、して。
悠斗の、雨に濡れたシャツの背中……見てたらなんだか、さわりたくなって。近づいてみたら、雨のにおいに混じって……悠斗の、においがした」
また、振り向く。
彼と視線を合わせて。
「……思わず、抱きついたら。悠斗が、振り向いて私を見て。私の名前を呼んで。すごく、胸が苦しくなった。きゅうっ、って。たまらなくなって」
「凛――……」
彼の呟きに、凛は息を吐いて、目を閉じた。
まるで、あのときのように。
……彼は、また、吸い込まれるように。
「……ん」
そっと重ねた唇のその感触。
あのときと、一緒。
「……悠斗の唇、好き」
唇が離れると、凛は言った。