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その、透明な鎖を
第14章 泣きたくなる
「あのときも、そう思った。唇、さらっとしてて。雨で濡れた悠斗の髪から雫が伝って、口元を濡らして。すごく気持ちよくて。もっと……もっとそれが欲しいって思って……」
彼女はそこまで言うと、一度言葉を切って。
「……それしか、知らないの」
俯き、少し哀しそうに微笑んだ。
「近づく方法が、それしかわかんない。
触れたい、とか……してみたい、とか。すぐそう思っちゃったのは、私がもう、知ってたからだと思う……セックスを」
彼の腕を解くようにし、そこから逃れた彼女は彼と向かい合うようにして。
「だからあの日も、私から悠斗を誘った」
どくん……と。
悠斗の心臓が波打つ。
彼女の目が、彼を真っ直ぐに見て。
「……悠斗の態度とかずっと見てて。嫌われてないなとは思ってたの。いつも、ちゃんと来てくれたし」