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その、透明な鎖を
第15章 凪のよう
「……化粧してんの?」
「ん? パウダーとグロスだけ。変?」
「ううん。可愛い」
「……悠斗、さっきからそれしか言ってない」
恥ずかしそうに彼から目を逸らす彼女。
どんな仕草も可愛くて。
そんな子が自分の彼女なんだと、彼はたまらなくなった。
「……行こう」
切符はすでに買ってあった。
改札を抜け、手を繋いでホームへと歩く。
その手は、電車を待つ間も離されないままで。
やがて到着した電車は比較的空いていて、ふたりは並んで座る。
肩を触れ合わせて。
凛から香る、甘いにおいに悠斗は思わず目を閉じて小さく息を吐いた。
もう何度も身体を重ねている仲なのに、そんな些細なことにも彼の胸はそうやって高鳴る。
……自分でも不思議なほど、本当に彼は彼女に惹かれていた。