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その、透明な鎖を
第3章 いいこと
「凛、こそ」
「ん?」
「来てくれたんだ」
されるがままになりながら、彼は彼女を見つめて。
そして――少し気まずそうにその目を逸らし、俯いた。
「どうして? 待ってるって言ったでしょ?」
くすっ、と。
彼女は首を傾げて、俯いた彼と視線を合わせる。
「ん……でも」
「え?」
「この前はほんと、ごめん」
「……何が?」
――そっと、彼の左腕に伸ばされた彼女の右手。
彼はその手の動きを目で追いながら。
「悠斗が謝ることなんかないよ?」
彼女の手が、つつ……と。
彼の手に向かって滑り落ちて。
「誘ったの、私でしょ?」
辿り着いたそこで、自分の指と彼の指を絡めるように、きゅっ……と握る。
「……凛」
その呟きに、ん?……と。
凛が悠斗を見上げるようにして。
なんだか余裕そうな笑みを口元に浮かべているように彼には見えて。