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その、透明な鎖を
第16章 記憶の奥底
「……そんな」
信じたくない思いで、悠斗は考えた。
凛の話から想像する彼は、亡くなった妻を心から愛し、その娘の凛を心から大事に思っている、そんな人だ。
凛とそういう関係になったのも、凛の願いを受け入れてのことで。
実際に会ったのは一度だけだけれど、そのとき抱いた印象も、穏やかで優しそうな人、だった。
この旅行も『楽しんでおいで』と。
そうやって、送り出してくれたと聞いた。
一泊だから、夜は……ふたりがそういうことになると、それはもちろん彼も分かってのことだろう。
……それなのに。
あんな場所にキスマークが付けられているということは。
それは明らかに、そう気づかせるため。
凛と、今もそういうことをしているのだと、自分に知らせるため――――。
「絶対そうだ……」
それに気付いたら、もうそうとしか思えなかった。
龍にとって自分の存在は歓迎されていないのだと。
……悠斗はそう思わざるを得なかった。