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その、透明な鎖を
第17章 遠くへ
悠斗は、龍と話をするつもりだった。
凛を解放してほしいと、頼むつもりだった。
もちろん凛には黙って。
彼を捕まえるには、凛の家の前でその帰りを待ち伏せるしかないだろうと、彼は考える。
そして小さく、溜め息をついて。
静かな電車の中。
身体の左側に彼女の重みを感じながら彼は思う。
このまま時間が止まればいいのに、と――――。
自分にいい印象は持っていないであろう龍と話すのは、正直、気が重い。
けれど凛のために。そして自分のために、どうしてもそれを避けては通れないのだ。
そう……知ってしまった以上、もう知らない振りなどできない。
まさか、龍さんと凛を取り合うようなことになるなんて――――悠斗は、思いもよらなかったその状況に、思わず自嘲気味に小さく笑ってしまった。
そのままそっと左側を見ると、彼女は気持ちよさそうに眠ったままで。
その寝顔が、本当に愛らしくて。
……凛、と。
心の中で彼女の名前をただ、呼んだ。