この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
その、透明な鎖を
第17章 遠くへ
「悠斗……」
戸惑うような、凛の声。
悠斗は唇をぎゅっと噛む。
「なーんてね! うそうそ」
彼女の方を見て、無理矢理に笑いを作って彼は明るくそう言う。
けれど彼女は、笑わなかった。
少し困ったように、俯いただけ。
それを見た彼の笑いが、少しずつ消えていく。
「……凛、冗談だから」
小さく、呟く。
――そんなこと、できるわけないって最初から分かってる。
ただ、言いたくなっただけ。
だから……だから、そんな顔しないで。頼むから。
無理ならいっそ笑い飛ばしてほしいのに。
目を閉じて、悠斗はそう思って。
繋いだ手は、いつまでも離せないままで。