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その、透明な鎖を
第18章 すべてを知るために
「悠斗君」
……とうとう呼ばれたその声に、彼はそちらへと視線を向ける。
「……こんばんは」
その男を見て、呟くように挨拶をする。
龍――――。
彼はいつものように、静かに微笑んでいた。
あらためて、悠斗は彼を見る。
このひとが、凛を――――そういう思いで。
無意識のうちに、拳を握ってしまっていた。
「早速だけど、どこか移動しようか」
龍はそう言うと、悠斗を駐車場の方へと促し、彼も黙ってそれについていく。
「ゆっくり話せるところがいいよね?」
「……内容が、内容なんで」
「ん?」
「店とか、そういう人目のあるところ以外でお願いします」
「……わかってるよ」
どんな内容かとも聞かず、悠斗の願いを龍は受け止める。
車に乗り込んだふたり。
動き出したそれは、どこへ向かうのか――悠斗はただ、黙って前だけを見つめていた。