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その、透明な鎖を
第19章 語られたこと
「……あの日のことは今でも覚えてるよ。
とっくに仕事が終わっている時間なのに、桜はなかなか帰ってこなかった。でも、買い物でもしてくるのかな、と……オレはその程度にしか……」
淡々と話す龍の様子に、悠斗はただ、黙ってそれを聞くことしかできない。
「まさか……まさか桜がそんな目に遭っていたなんて思ってもいなかった。
……そしてやっと帰ってきた桜の様子は明らかにおかしくて。震えてて。服も、汚れてて。何があったかなんて、明らかで」
天を仰ぐようにした龍は、その光景を思い出してしまったのか。
その整った顔を、少し歪ませる。
「オレは、そんな桜を抱き締めながら、守れなかったことを謝った。それしか、できなかった。
……桜は、オレにしがみつくようにしてひたすら泣いて……泣き叫んで……」