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その、透明な鎖を
第19章 語られたこと
「……桜は、停車中のワゴン車の脇を通ったとき、突然降りてきた男に、腹を殴られて。そのまま車の後部座席へと連れ込まれた。
紐のようなもので両手を縛られ。
声を出せないようにするためだろう……口の中に脱がされた下着を押し込まれて。
……そして……何の抵抗もできないまま――――」
途中、龍のその声が詰まったように思えたのは、気のせいではないと悠斗は感じた。
深い溜め息が龍の口から漏れる。
「――殺してやりたい」
そして、そんな呟きも。
「……そいつは、桜の中で果てたあと、声を上げて笑ったそうだ。許せない。桜を犯したその男を。身体だけじゃない。桜の心まで踏みにじったそいつを、オレがこの手で殺してやりたいって――――」
強く手を握り締めて。
それを、悔しそうに見つめながら。
「……でも、男については何もわからない。桜も、見たことのない男だったと言ってて。
……結局何もできないオレはただ、桜を抱き締めながら謝ることしかできなかった……」