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その、透明な鎖を
第19章 語られたこと
「……だからオレは、凛を抱いた。
そのときの桜と、凛が重なって。もう拒み切れなかった。オレにしか救えないのだとそう思った。
そんなこと許されないと思っていたのに……だめだった。凛は、桜とのそのやりとりを知らないはずなのに。その言葉は、オレにとっては――……」
龍は、深く息を吐く。
「そしてオレたちはそれからすぐに引っ越した。
新しいアパートでの暮らしにも少しずつ慣れてきたとき、桜の妊娠が分かったんだ」
「凛……」
思わず呟いた悠斗に、龍が頷く。
「そう……凛が、お腹にいることが分かった。
桜はずっと子供を欲しがってたから、結婚してからは避妊をしていなかった。
けれど……時期が、時期だ。
犯される前日も、夫婦生活はあった。桜が泣いて縋ってきたあのときも、避妊はしなかった。
オレの子か、その男の子か、まったく判断なんてつかなかった――――」
もう冷えていないであろうコーヒーを、龍は一気に飲み干すようにして。