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その、透明な鎖を
第19章  語られたこと


「……身代わり、か」


ぽつりと龍が呟いた。


「そうだね……あのときは、凛の存在に本当に救われた。
もちろん今も、救われてる。凛がいるから、オレは今もこうやって生きていられる」


その、重い内容に悠斗は唇を噛む。


「……桜が死んだとき。なんだこれ、って。なんなんだよこれは、って。ただそう思った。
桜の一生がこんなに早く終わっていいのか? これからどんどん幸せになれるはずだったのに。なのに、なぜ? なぜこんなに早く?」


誰かに答えを求めるかのように、龍はただ、その問いを繰り返す。


「哀しみ、絶望。何をする気も起きない。ただ桜を思って泣いた。
今までずっと桜のために。桜との毎日のために生きていたのに。その桜の存在を失ってこれから先、いったい何のために生きる? どうして、生きていられる?
桜という唯一無二の存在の喪失感を抱きながら生きていくなんて、恐怖でしかなかった。
もういっそ後を追えればと、そればかりだった。
……凛のことすら、考えられなかった」

「龍さん……」


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