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その、透明な鎖を
第19章 語られたこと
「積極的に死にたいというより、生きるためのすべてが億劫になった。
そういうのが、もう本当にどうでもよくて。このまま死んだらまた桜に会えるかな、とか。そんなことばかりで。
……正直、あの頃の凛がどうだったか、記憶にないんだ。学校はどうしてたんだろう、って。後から思ったぐらいだよ」
悠斗は、その間の凛を思った。
彼女は、桜さんと同じように消えてしまいそうな龍さんの姿をずっと見続け、でもどうにもできずにその胸をひとり痛めていたはずだ、と――――。
「倒れた、ときも……意識が遠のく中、これで桜の元に行けるかなと。確かそんなふうに思っていた。
けれど、目覚めたときは病院のベッドの上で。オレはまだ生きていて。
……姉の言葉に、凛の存在を、やっとオレは」
目を閉じて、それを思い出そうとしているかのように。
そしてその目が、そっと開かれる。
「……桜が、そこにいたんだ」
そう、呟いて。