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その、透明な鎖を
第19章 語られたこと
「そこにいて、泣きながら、オレを見ていて。
『死んじゃうかと思った』『私ひとりだけ残したりしないで』と。そんなふうに、言った。
桜、と思ったオレは、ようやくそれが桜じゃなくて、桜とそっくりの顔をした凛だと、気づいて」
……少し声が震えているように聞こえたのは、悠斗の気のせいか。
彼は、黙って。
ただ黙って……龍の告白を、聞く。
「ああ……凛の中に、ちゃんと桜は生きているんだ、って――――」
それで、オレは生きていけるかもしれないと思った、と。
……龍はそう、続けた。
「それからは、凛の存在だけが本当に心の支えだった。
桜を思って一緒に泣いて。桜の話を一緒にして。そんなふうにいつも、オレの隣に凛はいて。その気配もやっぱり桜と一緒で。
……時々、本当にそこに桜がいるんじゃないかと思ったぐらいで」
少しだけ口元に笑みを浮かべた龍。
けれどその目元は笑ってはいなくて。