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その、透明な鎖を
第19章  語られたこと


「……あのときも、桜がそこにいたんだ」


そうして、その笑みすらすぐに消えた。


「オレたちが初めてそうなったときの桜が、そこにいた。
酔っていたせいか、目の前にいるのが桜にしか見えなかった。
けれど泣き叫ぶ声で、我に返った。
そこにいたのは……桜じゃなくて、凛――――」


深い息を吐き、龍は口元を押さえた。
犯してしまったその過ち。
それは、なかったことになどできなくて。


「……そのことで凛が苦しんでいるのがものすごく分かるのに、どうしてやることもできない。
だってそうだろう? オレが原因なのに……それなのに、いったい何て言えばいい」


悠斗は、何も言えない。
龍と同じように、何て言えばいいかなんて彼には全く分からなかった。



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