この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
その、透明な鎖を
第19章 語られたこと
「……あのときも、桜がそこにいたんだ」
そうして、その笑みすらすぐに消えた。
「オレたちが初めてそうなったときの桜が、そこにいた。
酔っていたせいか、目の前にいるのが桜にしか見えなかった。
けれど泣き叫ぶ声で、我に返った。
そこにいたのは……桜じゃなくて、凛――――」
深い息を吐き、龍は口元を押さえた。
犯してしまったその過ち。
それは、なかったことになどできなくて。
「……そのことで凛が苦しんでいるのがものすごく分かるのに、どうしてやることもできない。
だってそうだろう? オレが原因なのに……それなのに、いったい何て言えばいい」
悠斗は、何も言えない。
龍と同じように、何て言えばいいかなんて彼には全く分からなかった。