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その、透明な鎖を
第3章 いいこと
「座っててって言ったのに」
ふふ、と笑いながら凛が戻ってきて。
手の中のグラスを彼に手渡す。
それを受け取った悠斗は、喉の乾きに今更ながら気づいてそれを一気に飲み干した。
「やだ、そんなに?」
凛が、笑う。
「おかわり持ってこようか?」
悠斗の手の中のグラスを受け取りながら。
彼はそれに首を振って答える。
「座って?」
そう言いながら凛はそのグラスをテーブルに置き、ベッドへと腰掛けた。
どこに座ればいいか迷ってしまった彼に、自分の隣をぽんぽんと叩いて促す。
少し躊躇いながらも、悠斗は凛から少し距離を置いて、そこに座った。
ふふ、と。
また彼女が笑う。
「……なに?」
「だって」
そっと、彼女の手が。
自分の身体の横へと投げ出していた彼の手に触れて。
「悠斗がここにいるの、なんだか不思議なんだもん」
そのまま、きゅっ……と握られる。
「そんなの、俺だって」
まさかの展開に、彼は戸惑っていて。
重ねられた手の感触だけが、妙にリアルで。
雑念を振り払うように頭を振り、小さく息を吐いた。