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その、透明な鎖を
第20章 答えなど、はじめから
「そういえばね」
凛が、何かを思い出したかのように。
「旅行のとき、悠斗が教えてくれたんだけど。
悠斗のお母さん、今度私を紹介してって言ったんだって。その……旅行は彼女と行く、って言ったらしいから」
「そうなんだ」
「それ聞いたとき、正直どうしようって思っちゃったの。だって、私……人に言えないこといっぱいあるから」
「凛――――」
「でもね、悠斗が。『言えないことじゃなくて、言わなくていいこと、だよ』って言ってくれたの」
「悠斗君、そんなことを」
「うん……嬉しかったな。悠斗はいつも私の心を楽にしてくれるんだ。
何回も『凛は普通の女の子だよ』って言ってくれるし」
――凛……。
凛が、俺のことをそんなふうに思ってくれていたなんて。
悠斗の表情が、無意識に緩んだ。
「そっか……。
凛は、悠斗君が本当に好きだね」
けれど、その龍の言葉に少し緊張を覚える。