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その、透明な鎖を
第20章 答えなど、はじめから
好きという感情だけではどうにもできない彼女のその深い闇。
それを心から理解し、それを含めたそのままの彼女のすべてを無条件に受け入れてくれる存在――そう、龍の存在を、凛が手放せないのはある意味当然のことで。
「……ばかだ、俺」
悠斗は思わず呟く。
彼女の心を縛り付けている、たくさんのしがらみ。
救いたいと思っていた。
……救えると思っていた。
けれど、彼女が本当に必要としているのは王子様の助けなどではなく、その闇を分かってくれる存在だったのだ。
そう……互いの闇を、互いが。そんな相手。
そしてその存在の答えなど、はじめからもうわかっていて――――。
思わず噛みしめた唇。
悠斗は、たまらずドアから離れた。
壁を背に、天を仰ぐ。