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その、透明な鎖を
第20章 答えなど、はじめから
「待ってて」
その言葉の数秒後、そのドアは内側にそっとさらに開かれた。
目を見開いてそれを見る悠斗と、廊下に姿を現した龍の目が合う。
すれ違いざまに軽く腕を引かれ、悠斗はそのまま彼の後を追った。
龍は、玄関を通り過ぎた先にある部屋へと入った。
おそらくここは彼の部屋なのだろう。
そして彼が引き出しから取り出したそれは、悠斗の想像していたものだった。
「……君は帰った方がいい」
部屋の入り口で立ち尽くす悠斗に告げられた、その龍のひとこと――――。
これから何が行われるかなんて。
そんなこと、明らかで。
……それでも、悠斗は首を振る。
考えたわけではないのに。
ここで帰ることを心も身体も拒否していた。
「悠斗君……」
そんな彼を見て、何か言いたそうにした龍だったが、結局何も口にしないままそっと部屋から出て行った。
悠斗は、俯いたまましばらくそこにいて。
やがて、意を決したかのように顔を上げると、凛の部屋へと向かって歩き出す――――。