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その、透明な鎖を
第21章 普通って
「凛の言葉を聞いただろう?」
けれどもなお、龍は言う。
「君から離れたくないと。申し訳なく思いながらも君のその手を離せないと。
……凛のその言葉、忘れたの?」
悠斗は首を振る。
忘れるわけがない。
嬉しかった。
とても、嬉しかったのだから。
「凛にとっては、オレとの関係と同様、君との関係も必要なものなんだよ」
「……え」
「あの子はまだ、17歳の女の子だ。
オレとの関係では満たされない、純粋なひとりの女の子としての凛が、君を必要としてる」
……ひとりの女の子としての、凛。
悠斗は、言われて。
あらためて、それを思う。
「君と過ごしているとき、あの子はただの女の子に戻れる。
生まれも、オレとの関係も、そういうものをすべて抜きにした、どこにでもいるような普通の恋人同士のように振る舞って、振る舞われて。
……そういう、本来の凛の心が満たされるんだと思う」
「凛……」