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その、透明な鎖を
第21章  普通って


確かに、彼女は言っていた……悠斗はそれを思い出す。
ただの高校生の恋人同士のように過ごす日々が、楽しかったと。嬉しかったと。


「……そして、君との関係だけでは満たされないのが、凛の心の中に澱のように沈殿している自分の存在に対する嫌悪感をはじめとする、負の感情だ」

「それは――……」

「そう。オレとの関係で、凛はそれを」


龍の言いたいこと。
……想像した、悠斗の鼓動が次第に激しくなっていく。


「オレと君でそれぞれ凛を満たし、支え、理解して。そうして、凛の心は安定していたんだ。
……不安定になりながらも安定していた、と言った方が正しいだろうけど。
前に言っただろう? 君と付き合い始めてからの凛の変化を。明るくなり、笑顔が増えたと。
オレは君に感謝していると――――」

「龍、さん……」

「凛の心はどちらも必要としてる。
……君とオレ、ふたりとも必要なんだよ」


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