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その、透明な鎖を
第22章 夏の名残
凛の、声。
『巻き込んで、ごめんなさい』
その言葉が、度々、ふっ……と思い出される。
――俺は、巻き込まれたんだろうか。
そう考えて、けれど首を振ってそれを否定した。
巻き込まれたわけじゃない。
凛の過去を……龍との関係を知ったあのとき、離れようとした凛から、離れなかったのは自分だ。
……巻き込まれたわけじゃない。
あのとき、自分でそう選んだ。
――俺は、後悔してるんだろうか。
こんなことになるんだったら、あのとき離れていればよかったと……思ってるんだろうか。
「……今さら、だよな」
そう。
考えても、わからない。
あのときの自分には、それしか考えられなかった。
こうなることがもしわかっていたら、なんて。考えても意味なんかない――――。
「……凛」
――巻き込まれたわけじゃない。
俺が、俺自身があのときそれを望んだんだ。
心の中で、そう呟いた。