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その、透明な鎖を
第22章 夏の名残
凛の家に着いて。
悠斗は深呼吸をした。
最後に見た凛の姿が脳裏に浮かぶ。
あの、表情。
泣き叫ぶように自分の名前を呼んだ凛。
「――――っ」
呼び鈴を押そうと動かされた手が思わず止まる。
――都合よすぎかな、俺……。
あんな、逃げるみたいに立ち去っておきながら、こんなふうにまた会いに来るなんて。
心が、揺れた。
もうこのまま会わずに帰った方がいいんじゃないか? そう、弱気になる。
「……っ、凛……」
――それでも……それでもやっぱり俺は。
思い直して、呼び鈴を押す。