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その、透明な鎖を
第22章 夏の名残
――会って、決める。
会って、凛の気持ちもちゃんと聞いて。
俺の気持ちもちゃんと話して。
そうして、決めるんだ。
何日もひとりで考えたけれど、出せなかった結論。
出せなかった答え。
凛を前にしたら出せるかもしれない。
凛と言葉を交わしたら、分かるかもしれない――――。
……けれど。
「あれ……」
もう一度、呼び鈴を押す。
そして、ノックも。
「凛?」
何度も、何度もそうした。
けれどやはり、中からは何の反応もない。
「……留守、なんだ」
そう、判断せざるを得なかった。
悠斗は諦めてそこから離れる。
訪ねて、凛がいなかったときなど今までなかったから、その気持ちは少し乱れていた。
「……一週間振りだから」
凛は、今日も俺は来ないと思ったのかもしれない。
そう、自分に言い聞かせて悠斗はその場を立ち去った。