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その、透明な鎖を
第22章 夏の名残
金曜も、結局会えなかった。
土曜のバイト帰りの夜、寄ったときも。
その家は明かりすらついていない。
龍の車もないままで。
悠斗の気持ちは、もうずっと不安定で。
それは、とうとう爆発する。
「……凛!」
玄関のドアを、叩いて。
いるわけがないのは、その家の様子を見ただけでわかるのに。
押さえ込んでいた焦りが、堰を切ったかのように彼を激しく襲う。
「凛!」
――何で?
繰り返すその問い。
――何でいないんだよ、凛!
「凛……凛、っ……!」
どんなに叩いても、反応など返ってはこない。
悠斗の声も、叩く手の勢いも、次第に弱くなっていく。