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その、透明な鎖を
第23章 その、透明な鎖を
はあ、はあ……と。
荒い息をしながら、彼は彼女に近づいて。
少し、離れた場所で立ち止まった。
「悠斗」
彼女はいつもように彼の名を呼び。
ゆっくりと、歩み寄ってくる。
彼の息はまだ、荒い。
「……そんなに慌てなくても」
少し遠慮がちに笑って。
彼の乱れた髪を、手を伸ばして、すっ……と整える。
――前にも、あった。こんなこと……。
黙ってされるがままでいた悠斗は、それをふと思い出して。
「凛……」
声に出して彼女の名前を呟いた瞬間、たまらなくなって。
「凛――――!」
その腕を掴み、ぐいっと引き寄せた。
凛の身体が悠斗のそれにぶつかる。
そのまま彼は彼女を力いっぱい抱き締めた。
「凛……凛っ!」
頭で考える余裕なんてなかった。
凛の存在を自分のすべてで感じたくて。
何も考えられないまま、ただ強く、彼女を。