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その、透明な鎖を
第23章 その、透明な鎖を
その、彼女の背中で揺れる黒髪を悠斗は見つめながら。
時折、絡めた指へと視線を落として。
――凛を、縛り付けてるいろんなものから解放してあげたいと思ってたのに。
それどころか、反対に俺のすべてがこんなふうに、凛に。
けれどそれは決して不快ではなくて。
受け入れることを選んだことで得られたその感覚に、不思議に幸せすら感じた。
「……後悔、しない?」
不意に。
前を向いたままで彼女が呟く。
「後悔?」
聞き返した彼の声に、こくん、と頷く。
「……どうかな」
「え?」
振り向いた彼女。
彼は続ける。
「そんなの、後になってみないとわかんないから」
もっともな言葉と。
「でも、今ここで凛を選ばなかったら、俺、絶対後悔すると思ったから」
その言葉に、凛は納得したように前を向く。
悠斗は、少し足を早めて、彼女に並んだ。