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その、透明な鎖を
第23章 その、透明な鎖を
「……家に、龍さんいるの?」
「ううん。お昼から仕事に行ったよ」
ちら、と悠斗を見て。
「龍に、用事?」
「ん?……まあ」
「何?」
「ん? 内緒」
「……気になるんだけど」
悠斗は、凛のその言葉に少し笑って。
「宿題の答えをね、ちょっと」
それだけ答えてあとは口を噤み、静かに、彼の言葉を頭の中で繰り返す。
『君にとっての普通って、何?』
――俺にとっての普通。
それは、凛と一緒にいること。
悠斗はそう、心の中で答える。
――たとえどんなところでも。
凛がいれば、そこが俺にとっての普通になるんだ。
凛がいない毎日に幸せなんて、もう俺は見い出せる気がしないから――――。