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その、透明な鎖を
第5章 夏が始まる
彼らの夏が、始まった。
悠斗の夏休み。
平日の、初日。
午前中の夏期講習が終わると、彼はすぐにあの場所へ向かう。
途中、コンビニに寄ってふたり分の昼食を買って。
凛に会いに、そこへと、ただ真っ直ぐに。
――もうすぐ。
もうすぐ、凛に会える。
彼の口元には無意識のうちに笑みが浮かんでいて。
「――凛!」
そうやって名前を呼ぶと、いつも彼女は笑って彼を見る。
少しだけ首を傾げて。
可愛く微笑んで。
それを目にするたび、彼の胸は高鳴るのだ。
――好きだ。
頭も、心も、身体も。
彼のすべてが、そう訴えて。