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限界Lovers
第14章 刺客
遥斗くんが走り去った後にはアタシとあの子が残された。
彼女は呆然と立ち尽くしている。
…まあ、無理もないわね。
「お茶飲む?」
「……要りません」
「座る?」
ズズッとお茶を啜りながら相向かいを勧めると彼女は少し迷って…でも大人しく座った。
「アンタいつから遥斗くんが好きなのよ」
「…高校の時から」
「長いわねぇ…」
「フフっ…でしょ?」
余り表情が豊かな方ではないだろう彼女の目には涙が浮かんでいる。
「…アンタ不器用そうね」
「よく言われます」
「可愛いげのない女って本当損ね~」
わざとデカイ声で言ったら彼女は苦笑いした。
「早く違う人探しなさい」
「見つかるかな…」
「見つかるわよ!“女”なんですもん!」
「…可愛げないって今言ったじゃない……」
「そんなアンタの可愛いげのなさを可愛いって言ってくれる人選びなさい。…いるから、絶対」
ーー根拠なんてないけどアタシは思う。
基本男と女しかいないこの世界だもの絶対どこかにいるはず。
そんな彼女の下手クソなひたむきさをちゃんと見てくれる人…
彼女に限らずみんなそれぞれに合った人が絶対どこかにいるんだと思ってる。
そうじゃなかったら人類はここまで繁栄してこないのよ…
「…だからさ、ぶすっくれてないでできる限りいろんな人に会いなさいよ。時間は限られてんのよ」
アタシの言葉に『可愛いげのない』彼女は泣いた。
「…それでも山下くんがいいって思うのは我儘?」
「さあ?…でも視野だけは広げときな。その隙にみなみからアタシが遥斗くん奪うから」
「ええっ!?」
ーーーーアタシは人が好き。
どの人もみんな完全じゃなくて、でも完全になりたいと願ってる。
欠けた部分を自分で補う人のバイタリティーもパートナーと手を取り合う人の姿勢も人それぞれで…
アタシだって…
「失恋してんのはアタシだって同じなんだからね!一人で悲劇のヒロインにならないでちょうだい!?」
「…山下くんの人気は性別を越えたんだ…凄いな」
ズズッと鼻を啜って彼女は笑った。
…ちょっとは元気でたかしら。
この『可愛いげのない』彼女に幸あれと…自分の事を棚に上げ思っていたアタシだった。