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限界Lovers
第22章 鈴木将太の憂鬱3
お久しぶりです、鈴木将太です。


最近の趣味は写経です。



「心を静めて…“~般若心経”」



ーーーー先日、母ちゃんに出家したいと言ったら寝言は寝て言えと怒られました。



瀬戸内寂聴法話集を聞いて涙を流し、僕も人のために生きたいと…
穢れた僕でも清く正しく生きるには仏の道しかないんじゃないかと考えたのに…


全く、人生なんてうまくいかないもんです。


うまくいかないと言えば…




「なあ、みなみ…結婚したら“アナタ”とか呼んでくれんの?」


「呼ばないよー」


「一度くらい呼んでみてよ」


「呼ばないって」






「………」



家を出る時は常に警戒してて良かった。


細く開けたドアの隙間から隣のバカップルが通りすぎるのを見送る。


二人は僕に気づく事なく腕なんか組んでラッブラブに歩いて行き、部屋に消えた。


「…何がアナタだよ、バッカじゃねーの!!」


どうやら僕…遅すぎる反抗期に突入したようで、世の中が斜めに見えて仕方ありません。


だいぶ冬めいてきた街の中、下ばかり向いてバイトに向かう。


正直、バイトも行きたくない。


だってそこには…


「よう兄弟!」


ーーー高梨くん……


「…………っス」


「何だよー、最近鈴っち声小せーよ!」


バシンと背中を叩かれ凄く痛い…


「あー…そうだ、鈴っち…報告があるんだわ」


「何?」


「実はさ、菜々が妊娠した」


「………はあ?」


「俺…菜々と結婚する!」


「………」




馬鹿ばっか。
バーカバーカ。



「避妊しなかったの?」


「いや…ピル飲んでるって言うから安心してたら…何か毎日は飲んでなかったみたいで!」


「…それ本当に君の子?」


「あー、計算すると先月らしいから…多分俺の子じゃないのかなー」


先月…忌まわしきあの日…


そう思ったらサーッと血の気が引いた。



僕…小板橋さんとも…



……まさかね?



「ヤベー俺パパになるよ鈴っち!」


高梨くんは頬を染め喜んでいるけど…


「で、でもどうするのさ、高梨くんフリーターだろ?」


「親父に言ったら会社の役員にしてくれるって」


「はあ?」


「ウチ土建屋だから。で、庭に家も建ててくれるって」


「………」











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